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    半年だけの滞在のつもりが、4年間もロンドンに住んでいました。ロンドンでの生活、ヨーロッパ旅行を中心にお届けします。


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2008/09/10(Wed)

【パース編】遠き道のり

初老の女性と別れた後、次なる目的地フリーマントルを目指すべく
バスターミナルをぐるぐる徘徊する私。

それを見ていた40代くらいのおじちゃんが
「きみは何がしたいの? どこに行きたいの?」と聞いてくる。
いかにも英語ができなそうに見えるのか、ゆっくりと小さな子どもに言うように語り掛ける。
今の私には非常にありがたい気遣いだ。

「アイゴートゥーフリーマントル!」
お決まりの言葉を彼に伝える。もっと気の利いた言葉を言いたいところだが、仕方ない。
「オオ! フリーマントル! もじゃもじゃもじゃもじゃ」
フリーマントルが彼にとってそんなにもいい場所なのか。
先ほどの口調とは違い、興奮した様子でフリーマントルについて語っていたが、
私があんまりに無反応であることにやる気をなくしたのか、
「いい旅を」というようなことだけ言うと、その場を立ち去ってしまった。
てっきり彼が行き方を教えてくれると思っていただけに、
拍子抜けした私は、しばらく宙を眺め、遠くの日本を思い出していた。

「どうしたの?」
再び他の人から声がかかる。今度は女性だ。
パースの住人は困っている人がいたら放っておけないのだろう。いい街だ。
「アイゴートゥーフリーマントル…… アイドンノウ……」
先ほどの失敗を繰り返さないよう、今度は自信なく小さな声でつぶやく。
あらあらあら、大変だ。というような顔になった彼女は、
私の手を取ると、バスターミナルとは反対の方角にある
電車のホームにつれていこいうとするではないか。

いやいやいや、違うって。
私はバスの乗り放題チケットしか持ってないからさ。
(実際はバスも電車も乗れます。私が知らなかっただけ)
なんてことは当然彼女に伝えることはできず、後ろからおずおずついていくばかり。
親切な彼女に別れを告げた後、彼女に見つからないよう、
再びバスターミナルに戻る情けなさったら無いですよ、本当に。

【目的地はどこだ?】
バスターミナルに戻ると、バスの目的地が書かれたボードを発見した。
最初からこれを見ておけばよかったんだ。
己の注意力の無さ、視野の狭さを呪った直後、
「これもまた旅の醍醐味よねー」と気持ちを切り替える。失敗はつきものなのだ。
さて、ボードを見ると「フリーマントル」を目的地としたバスは確かにあった。
あったが、困ったことに2つもある。どちらも「フリーマントル ほにゃほにゃほにゃ」。
この「ほにゃほにゃほにゃ」がさっぱり分からない。

首をひねっていると、ターミナルに「フリーマントル ほにゃほにゃほにゃ」に向かう
バスが到着している様子が見えた。焦って駆け寄る(今日は走ってばかりだ)。
「ディスバスゴートゥーフリーマントル?」
乗り込む際に運転手に行き先をしっかり確認する。うん、冷静だ。
「もじゃもじゃもじゃもじゃもじゃもじゃ」
「!!!」
てっきり「イエス」か「ノー」の簡単な返答が来ると思っていたのに、
運転手は何かをしきりに伝えようとしている。……分からぬ。お前は何が言いたいのだ。
「もじゃもじゃもじゃもじゃもじゃもじゃ」
なおも語り続ける運転手を前に、私はあっけなく白旗をかかげる。
もう良い。語らなくて良い。私はお前についていく。

聴き取りをあきらめた私はメルセデス社製のバスに今日二度目の乗車をする。
乗っている人は小学生くらいの双子の中国人、
あごひげを胸のあたりまで伸ばした仙人風の中国人、
一番後ろの席で目を鋭く光らせキョロキョロしている白人、
そして優しい笑顔で私を見つめる白人のご婦人。計5名だ。
後ろの席の白人はいかにも怪しいので、私は迷わずご婦人のそばに座った。
「いい天気ね。フフ」
ほんわりとした口調にこちらまで笑顔になってしまう。

【レーサー気どりの運転手】
パースの運転手の運転は非常に荒い、荒すぎる。
人にもよるかもしれないが、少なくとも、この運転手は異常だ。
まず、カーブでブレーキをほとんどかけない。
タイヤは「もうたまらん」と言いたげにキュキュキュと派手な音を鳴らし、
そして車体は冗談抜きに横転しそうになりながら曲がるのだ。
そのたびに私は「ヒ、ヒ、ヒエ~」と情けない声を出してしまう。

おまけにバス停が近づき、乗客がいると分かった途端、
この運転手は20m手前であってもドアを開けてしまう。
双子がドアの近くの席に座っていたので、カーブに差し掛かったら
バスから落ちてしまうんじゃないかと心配になってしまった。
ただ、どんな状況でも驚愕していたのは私一人だけ。
ほかの乗客はのんびりとしているのだ。慣れってコワイなあ。

バスの運転にハラハラしていると、すぐそばにいたご婦人のカバンから携帯の着信音が鳴り出した。
日本ではバイブ設定にしていないと、「切っとけよ」という痛い視線を浴びることになるのだが、
皆、特に気にする様子もない。これもまた日常のワンシーンのようだ。
お国が変われば、考え方も違うのだなあと関心していると、
ご婦人は携帯を切るのではなく、ものすごく大きな声で話し始めたのだ。
もちろん、皆、まったく気にしていない。
友人によるとバスでも電車でも携帯で話すことはマナー違反ではないという。
日本はちょっと過剰すぎるのかしら? でも、ペースメーカーが狂ったりしないのかな?

【残酷な現実】
何度も横転しそうな怖さを味わうも、次第に慣れてしまった。
明らかに日本よりも強い紫外線が気にはなるが、
ぽかぽかの暖かな日の光に眠気を覚えた私は、
シティ行きのバスで出会った初老の女性に注意されたにも関わらず、再び熟睡してしまった。

時間にして30分くらいだろうか。
運転手のやたらと大きなダミ声でたたき起こされるように目が覚めた。
「終点だよ。早く降りとくれ」
眠い目をこすりながら、外を見るとそこは人々で賑わったフリーマントルの街だった。


……という私の期待はあっさり裏切られた。
目の前には様々なお店が並ぶ代わりに、墓地が広がっている。
人で賑わうどころか、人の姿はどこにも見当たらない。
一瞬、まだ夢を見ているのかと思った。こんなイヤな夢なら早く覚めて欲しいとも思った。
しかし、これは紛れも無い現実である。
……そうなのだ。私はバスを乗り間違えてしまったのだ。


「おーい。どうした? 終点だよ」
ダミ声がどこか遠くで聞こえた気がした。
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